仮説思考 BCG流 問題発見・解決の発想法

仮説思考とはあらかじめ答えを絞り込み定義し、それについて仮説を立てながら分析と検証を行っていく手法。
どなたかに「この本は名著だ!」とおすすめいただき読んでみた。

非常にわかりやすく解説されており、「まず答えを定義して、仮説を立てて分析検証する」という仮説思考に特化しているのが面白いと感じた。
方法自体は、経験値を積んだ忙しいビジネスマンは(無意識などでも)当然やってるだろうと思うことだと思うんだけど、それを事例を交えて解説しているので、初学には最適な本かと。 ただし、あまり事例の具体性が現実的にビジネスで直面するレベルとは乖離している感じがあるので、もしこれをそのまま実践で試そうと思うと面食らうような… あくまで仮説思考の触りを体験してみるのに「最適」と言うべきかなあ。

以下、気になったポイントをメモ。

p.35 ”情報は集めるよりも捨てるのが大事”

情報理論の世界では、不確実性が高いことを「エントロピーが大きい」と表現する。(中略)
それに対して、「この商品のターゲットユーザーである二十代男性は、〜(中略)」という意見は、新聞広告という選択肢を消しやすくなる。すなわち、エントロピーが下がって確実性が増すという意味で、大変有益な情報である。

うん。コンサルタント的な考え。
あくまで著者の表現であって、本書の本質的なポイントのお話じゃないのだけど、ちょっと気になる表現。
不確実性が低くなる答えを選ぶことは、サラリーマン的なというか、安定した結果を求める職業にとっては正解なんだろうけど、これが起業する立場の者になったときは、エントロピーが低いものを選ぶという行為は正反対の価値観なんだよなあ、と。

p.43 ”大きなストーリーが描けるようになる。〜実験する前に論文を書く”

恩師であるダン・キャンベル先生から「実験する前に論文を書け」といわれ驚いたそうだ。(中略)「〜これは大変なアドバイスだったと思います。書いてから実験をすると、結論を出すために必要な対照は完璧に取れることになりますから、期待どおりの結果が出なかった時でも、その実験は無駄にならない。」

p.122 ”質問の進化が仮説の進化につながる”

A事業部、B事業部、C事業部のそれぞれでインタビューを行わなくてはならない場合がある。(中略)不慣れなインタビュアーは質問を最初から最後まで変えず、同じ質問をする。これでは返ってくる答えも似たような物になってしまう。
それに対してインタビューのうまい人は、最初にA事業部にインタビューを行ない、その結果、「この質問は自明の理だからもう聞く必要はない」と思えば、B事業部、C事業部にはその質問はしない。逆に、A事業部にインタビューした質問の中で、「これはもう少し深く掘り下げて質問しないと本当の答えはえられない」と思うものがあれば、追加の質問を用意して出かける。

p.125 “インタビューメモの目的3:プレゼン資料のベースとするために定量化”

資料のベースとして使うインタビューメモは、定量化を心がける。(中略)「シェアが増えた」という話をしたら(中略)一パーセントと五十パーセントかによって天と地ほどの差が生じ、あまり役立つメモにはならない。

p.166 ”社内の恥はかき捨てと心得る”

若いうちは失敗をおそれずにおおいに間違えることだ。
社外のディスカッションでピントのずれた仮説を提示し、恥をかいてしまうと問題になることもあるだろう。だが社内のディスカッションならば大いに恥をかいたり、失敗したりしてもいい。「社内の恥はかき捨て」

p.170 ”上手なディスカッションを実施するコツ”

もちろん完璧な仮説である必要はない。半完成品でいいからとにかく俎上に載せてみることが大切だ。「自信はないけれど、こういうことなのではないか」という程度でいいので、仮説をぶつけてみることだ。たとえ間違っていたとしても、周囲にはその問題に関してよりくわしい人や、まったく違う視点を持った人がいるのだから、その人たちとディスカッションすることによって、仮説を検証し、進化させていけばよい。

p.177 ”まず仮説ありき、次に分析”

いずれの場合においても最も大切なのは、仮説を検証するために分析を行うということだ。闇雲に分析してから問題を整理するのではなく、まず問題意識をもって仮説をつくり、それが正しいかどうかを検証することが、分析を行う正しい姿勢である。
なぜなら、仮説を検証するために分析を行う場合、必要となる分析もおのずと限られ最小限の工数で済むからだ。これを忘れて、分析結果から何かを発見しようとすると、あれもこれもと闇雲に分析することになり、結局は情報洪水に溺れてしまう。

p.196 ”良い仮説は経験に裏打ちされた直感から生まれる”

トレーニング1:So What?を常に考える
例:iPodが流行している⇒(だから何?)⇒ウォークマンの市場が減少する⇒(だから何?)⇒ソニーの業績が悪化する⇒(だから何?)ソニーは戦略を変更する必要があるかもしれない。
So What?は何通りもあるのだ。
トレーニング2:なぜを繰り返す
例:なぜ、プロ野球は流行らないのか⇒プロ野球がつまらないから。
なぜ、プロ野球はつまらないのか⇒スターがいないから。ファンを楽しませる努力を球団がしていないから。
なぜ、スターがいないのか⇒スターはメジャーリーグに流出してしまうから。若い有望な選手がプロ野球に入ってこないから。
なぜ、若い有望な選手がプロ野球に入ってこないのか⇒プロ野球の給料が低いから(検証すれば事実ではないとすぐわかる)、サッカーなどの魅力的なスポーツに若者が向かっているから。
なぜ、サッカーが若者をひきつけるのか⇒Jリーグが魅力的だから、ヨーロッパで活躍しているから。ワールドカップがあるから。地元のクラブチームが若いうちから選手を育成しているから。
(…キリはないが)このうち、プロ野球でも「もっと地元密着の育成スポーツに転身するべき」という仮説が考えられる。

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